一面の薄緑。


遠くにはキラキラと太陽の光を浴びて水面を揺らす湖が見えた。


誰もいない静かな世界に一人佇む私。


だけど恐怖や寂しさを感じることはなく、なぜだかとても懐かしい。


私の頬を撫でる爽やかな風が、髪を揺らした。


カサカサと風に揺られる草の音。


私は湖の光に吸い寄せられるように足を進めた。

「お待ちしておりました。遥夢様。」


湖の中央、水面に浮かぶように立っているアル。

「おいで。」


微笑みながら両手を広げるアルの姿がマツとかさなって、私はアルを見つめながら一歩足を踏み出した。


滑るように水面を進む足。


私も水に濡れることなく湖の中央に立つ。


「私だけの乙女。」


アルは私を両手で抱きしめて囁いた。


アルの腕の中はマツのぬくもりと似ていて、身を委ねようと力を抜こうとして、だけど違和感をすぐに感じた私は、


「あなたはマツではないわ。」


アルの腕の中から体を捩り、抜け出して言葉を掛けた。