「始まったようですわ。」


紅茶のカップをソーサーに置きながら微笑みを浮かべるデリーさん。


「始まった?」


何のことかわからない私は首を傾げながらデリーさんに聞き返した。


「わたくし達も始めましょうか。」


椅子から立ち上がり、私の手を引いてドレッサーの前まで来ると、


「まずはその髪と瞳をかくさなければいけませんの。」


ドレッサーの前の椅子に私を座らせて忙しく道具を引き出しから出している。


私の目の前にはとても明るい茶色のウィッグ。


「髪の色はこれでいいかしら?」


「はい。」


「では目もブラウンでよろしいですわね。」


頭にウィッグをつけられ、瞳にはカラーコンタクト。


カラコンなんてつけたことのない私はとても怖くて何度もギュッと目を瞑ってしまったけど、入れてしまえば心配するような異物感もなく、


「これでどこに出掛けても大丈夫ですわね。」


ニッコリ微笑むデリーさんに鏡越しに微笑み返した。


だけど、眉は黒。


もちろん睫毛も私は黒だ。


「忘れてましたわ。」


そんな私の不安を悟ったのか、デリーさんは眉をカットしてライトブラウンのアイブロウを、睫毛にも同じ色のマスカラを使って私の持つ黒の色素を隠してしまった。


「これで完成ですわ。」

どこから見ても伝説の乙女だとは誰もわかりませんわねってとても可愛らしい笑顔を見せた。