遥夢に応えるデリーの声に混ざって俺を追い出そうとする力も動いている。


「ここの会話に聞き耳を立てて喜んだり怒ったり忙しいネズミがいるようですわ。」


デリーの奴…。


必死に抵抗するがこの訓練場からじゃ俺の力は及ばず、あっさりと追い出されてしまい、俺の頭の中でプツリと音がして何も感じ取れなくなった。

深い深いため息をついてデュランに視線を向けた俺は、


「何をすればここから出れる。」


従うという行為自体に苛立ちを感じないわけではないが、さっさと済ませて遥夢を迎えに行く事を優先することにした。


「力の制御です。」


「あ゛?制御ならしまくってんだけど?」


力を解放した事なんて一度もねぇ。


影は影。


物心ついた頃から自分の力を抑えて生きてきた。

それをずっと側で見てきたデュラン、ディアス。

「お前らも知ってんだろ?」


呆れたように話す俺にデュランは真っ直ぐ俺を見て、


「マツ様の力は今までとは違います。
記憶を預かり、そして記憶を戻し、遥夢様と一緒になることであなた様は騎士として膨大な力を得ることが出来ます。だから、遥夢様と今は離れていただいたのです。」


遥夢様とまた結ばれてしまったら我々ではあなたの力を抑えられないと続くデュランの言葉にディアスはニヤリと笑って俺を見た。


「要するにだな。
遥夢と早くあーんなことやこーんな事をしたかったら早く騎士の力を制御出来るだけの器ってやつを身につけろって事だ。」


「はぁ?」


「器が大きくなんねぇと制御どころか力がだだ漏れで誰もお前に近寄れねぇんだよ。」


わかったらさっさと訓練始めようぜとディアスはケラケラと笑っている。