「遥夢―…。
遥夢――………。」


体が揺さぶられ瞼を持ち上げると心配そうなディアスさんの顔が瞳に映った。


「どうして?」


状況に頭がついていかない。


「つらい思いをさせてごめんな。」


ディアスさんの指が私の目尻に触れて、涙を拭ってくれる。


その行動に自分が泣いているんだと気付かされた。


だけど涙の訳は私にもわからない。


ただ悲しい。


ただ寂しい。



心に大きな穴がポッカリとあいたような焦燥感に襲われる。


「全部話すよ。
聞いてくれるか?」


聞いて欲しいって懇願するようなディアスさんの言葉に私はゆっくりと頷いた。



「遥夢は俺の婚約者なんだ。」


デュランさんから聞いた言葉と同じ言葉を口にするディアスさん。


「はい。」


「そこまでは覚えてるみたいだな。」


「はい。」


デュランさんの低い声が今でも耳に残っていて離れない。


心が震える。


「遥夢は俺の婚約者。
子供の頃から決められていた。
ある日突然マツと姿を消したんだ。」


ディアスさんの言葉は私の耳の奥で何度も反響した。


マツさんと姿を消した?

「マツは妹、デリーの婚約者だった。」