終始態度の変わらないマツさんに困ったように眉を下げるデュランさん。
そして彼の口から聞かされた言葉に私の頭は真っ白になった。
「――遥夢さんはディアスの婚約者なのです。」
そこから何を話したのか、何を耳にしたのか…
何も覚えていない。
ただテーブルがひっくり返って大きな音が鳴り、私はディアスさんに支えられるまま部屋を出た。
マツさんが怒鳴っていたような気がする。
暴れたのはマツさん?
「遥夢?大丈夫か?」
放心状態の私をベッドに座らせ、頭を優しく撫でつけてくれるディアスさん。
掌はあたたかくて優しい。
だけど私の心が欲しがるぬくもりとは違う。
そんな気がする。
ディアスさんと私は将来を約束した仲だと聞かされても心が震えない。
どうして?
どうしてマツさんじゃいけないの?
目の前で優しく微笑んでくれるディアスさんに申し訳ないくらいマツさんが気になって仕方なかった。
心が彼を呼んでいた。

