「マツさん?」


不思議に思って声を掛けると彼の腕の力が強くなる。


「俺、全く余裕ねぇし…。」


溜め息混じりに言葉を落とされ、私はマツさんの腕の中から解放された。

彼の言いたいことが私にはわからない。


だけどなんだか苦しそうなマツさんに心がギュッと痛くなった。


「ピンクをなぜ着るのかは私にもわかりません。だけどディアスさんに一度もピンクを勧められたこともありません。」


だから、彼の欲しい応えなのかどうなのかはわからないけど、私は正直に言葉を返した。


「ごめんな。遥夢…」


「謝らないで下さい。」

「けど…。」


「私もマツさんを知りたいと思ってます。
マツさんはお話が上手だから私は自分から何も聞かなくても大丈夫です。けど、私は話が下手だから…
聞いて下さって、助かっているんです。
自分でもわからないことが多すぎて応えられなくて申し訳ないんですが、マツさんはそれをいつも受け入れてくれます。
記憶を失った事、ずっと寂しいって思ってました。
だけどマツさんはそれを埋めてくれた。
記憶を無くしてポッカリ空いた穴がマツさんがいるだけで塞がった気がするんです。」


「俺、めちゃめちゃ独占欲強ぇみたいだ。
遥夢の全部が知りたいんだ。」


「はい。」


「うざくねぇの?」


「いいえ、私も同じです。」


不安そうに私を見つめるマツさんにニッコリと笑いかけた。