そのまま動かなくなった遥夢。
小さな肩が揺れていた。
「遥夢?」
彼女の震える肩に腕を回して抱き寄せる。
胸に広がるのは、この木に触れたときに感じる暖かさ。
俺は遥夢を知っているのか?
さっき遥夢に何かあったら俺は…と感じた不思議な気持ちはいったいなんなんだ?
遥夢の身に何かあったら…
俺は…
生きていけない?
「マツさんの胸の音が聞こえます。」
胸に耳をあてて呟く遥夢。
「何だかとても懐かしい。」
遥夢の言葉に胸が高鳴った。
「音が大きくなってます。
鼓動が早くなって…」
「お前!!」
遥夢を引き剥がすように距離をあけ、からかってるのか?と続けるはずの言葉は声にならなかった。
「どうして泣く?」
遥夢の大きな瞳から大粒の涙がポロポロと零れ落ちていたんだ。
「わからないの…。
だけど、マツさんに抱きしめられてなぜだか泣きたくなったの。」
正直ショックだった。
「悪かった。」
受けたショックは思いの外大きくて素直に謝ることが出来なかった。
「違います。違うの!」
必死に首を振りながら話す遥夢の言葉に被せるように、
「俺もこの場所は譲れない。
だから木を隔ててお互い過ごせばいいだろう?」
言葉を掛けて立ち上がり遥夢が座る場所の木を隔てた反対側に移動して腰を下ろした。

