体を動かそうとする遥夢に俺は追い討ちを掛けるように、


「今、薬でお前の体を動けなくした。
お前の居場所はそのベットの上だけだ。」


力を使ったことは伏せて話をした。


「そんな事をしなくても、もう私はあなた方に抗おうなんて思ってないわ。」

無駄なことをさせてしまったわねって冷たく言葉を吐き出す遥夢。


「それは、いい心掛けだ。
なら、俺に逆らうのはもうやめるんだな。」


遥夢の瞳に力が戻ったことを確認できて安心したと共に、あなた方と呼ばれたことに心が痛んだ。



「なら、俺も少し眠らせてもらう。」


ギシリと軋むベッド。


「なっ!」


驚く遥夢に俺は平然と言い放った。


「ここは俺の部屋。
ベッドも一つしかないんだから当然だろ?」


本当は俺がお前に寄り添いたいんだ。

お前のぬくもりを感じていたいんだ。


「それに、お前はもう俺達に抗うつもりはないんだろ?」


こんな風に言いたい訳じゃない。


心が悲鳴をあげている。


「そうね。」



諦めたように呟く遥夢の瞳はゆらゆらと揺れている。


傷つけてごめん。

守ってやれなくてごめん。


遥夢のぬくもりを感じたいのに苦しくなる。


ベッドに入ることなく俺は部屋を出た。


遥夢を見ていたいけど見ていられない。


春香と遥夢を思いながら咲かせた蘭の花。


逃げるように花の世話をした。


せめて遥夢がこの花に癒やされればいい。


そんな願いを込めて俺は夢中で蘭の花の世話をした。