そしてついにその時が来た。
恐る恐る温室に近付く遥夢。
ぐるりと周りを見渡して遥夢の目に止まったガーデンセット。
瞳が懐かしがっている。
俺の思った通り、遥夢はガーデンセットに惹きつけられた。
あの荒れ果てた温室と同じように設置したガーデンセット。
少しでも遥夢の慰めになればいいという思いだった。
なかなか温室の中には入れない遥夢の後ろから彰人が近付いていた。
遥夢に温室に入るように促す。
俺は温室の奥から二人の様子を見ていた。
あり得ないくらい心臓がうるさくて、掌にじっとりと汗をかいている。
緊張しているのか?
温室のドアが開き、彰人の声が響いた。
「マツ。いるんだろ?」
彰人の叫ぶ声に俺の緊張は益々大きくなり、その声で素直に登場できなかった。
情けねぇ…。
だけど蘭の花に見とれる遥夢を見ていると今度は俺もその瞳に映りたくてウズウズしたんだ。
「とても綺麗…。見たこともない花がたくさん…。」
ポロリと零される遥夢の言葉に俺は嬉しくなった。
春香も蘭が好きだった。春香の為に揃えた珍しい蘭の花。
一生懸命探して一生懸命世話をした。
遥夢も喜んでくれるのか?
有頂天になった俺は叫んだんだ。
「あったりめぇだ!」

