次の日、彰人は春香を支えるために歩き出した。
向かう方向は違っても、俺も一歩を踏み出した。
「俺からのプレゼントだ。」
差し出させたのは携帯電話。
「いらねぇ。」
身分を証明するものを持たない俺はその便利なアイテムを手にすることは出来ない。
それに興味もなかった。
「緊急の時、マツが持ってねぇのは都合が悪いんだよ!」
強引に渡された携帯。
小さくて軽いはずが、やけに重く感じた。
「最近、遥夢はかなりやられてるらしい…。
強引に連れ出せねぇから歯痒くて仕方ねぇ。
遥夢の我慢にも限界が来てるらしいから動くはずだ。
頼んだぞマツ。」
だから携帯なんだな。
携帯には彰人のお袋さんと彰人の番号とアドレスが既に登録されていた。
「わかった。」
俺の返事を聞いて彰人は安心したのか顔の力を緩めた。
けれど、すぐにキリリと表情を引き締めて
「行ってくる。」
それだけを告げて歩き出した。

