面白い奴だけど、帰るのなら仕方ないと彰人の背中を見送る俺に彰人は足を進めながら、
「ついてこい。」
振り返ることもなく声を掛けた。
「名前、聞かせろ!」
彰人の横に並んで歩く俺に掛けられる声。
マーフィーは違うだろう…。
それにマーフィーとは呼ばれたくない。
「マツ。」
「あ゛?」
「名前はマツ。」
「なんかわかんねぇけど、マツって呼べばいいんだな。」
「お前は?」
「彰人」
口数の少ない彰人と必要最低限でお互いの事を話す。
マツ
俺はこの世界では何も持たないただのマツでいられることに少しだけ喜びを感じた。

