温室を見渡して溜め息を吐き出した。
ぐるりと見て、何も変化のない温室。
花は綺麗に咲き誇り、とても整備が行き届いた温室。
だけどマツは変わってしまったんだね。
彰人さんもいない。
何より、私を魁夢の鳥籠の中から救い出してくれた旦那様がいない。
感傷に浸ってる暇なんてないのかもしれない。
ここで座って旦那様を偲ぶより彰人さんを救う方法を模索する方が大切なのかもしれない。
だけど、今は何もかも忘れて旦那様の思い出に浸りたいんだ。
「旦那様。」
震える唇から零れ落ちる声。
もう笑いかけてもらえない。
声も聞けない。
そう思うと胸がギュッと苦しくなった。
「呑気なもんだな。」
ポロポロと涙を零す私の顔をのぞき込むようにして声を掛けてきたのはマツだった。
何とでも言えばいいわ。
今は旦那様に思いを馳せたい。
「邪魔しないで。」
マツを見ることなく言葉だけを返した。
人を欺いてきたマツを瞳に映したくなかったんだ。

