「ロムを持ち出しただけでは証拠は消えていない。機械の中に残されている映像を全て消去しなければいけない。」
竜一に声を掛けながら手馴れた様子で機械を操作するマツ。
信じられない光景。
信じていたものが全て音を立てて崩れた。
もう何もない。
本当に全てを失ってしまったの?
カチャカチャとボタンを押す操作音が響く部屋の中で私は呆然とマツの背中を見つめていた。
「相当ショックだったようだな。」
そんな私の横に腰を下ろした竜一の声が耳障りだ。
「お前には関係ない。」
「俺達は夫婦なんだぞ。」
「書類上だけ、私はお前の妻になった覚えなどない。」
「それならば、無理やりにでもお前を俺の妻にしてやろうか?」
ベッドの上に転がされ、私の上に馬乗りになる竜一。
卑劣な男の手に落ちる。
それだけは防ぎたいと思い続けいた。
でもどうでもいい。
今はもう何も考えたくない。
「好きにすればいい...。」
諦めたように告げる私はもう人形だった。
全てを諦めて生きていた人形。
魁夢と暮らしてきた時の私だったんだ。

