穏やかな日々は長くは続かないーーー。



私は幸せにはなれない。


どんなに望んでも私が幸せになることはないんだ。




温室に呆然と立ちすくむ私の髪を一房指にかけ唇を寄せた後


「その日を楽しみに待っていろ。」


そんな言葉を残して男は私に背を向けた。



クツクツと喉の奥を鳴らすような笑い声が遠ざかるのを私はただ黙って見送ったんだ。









それから数日して旦那様は亡くなった。


旦那様だけじゃない、屋敷の人が全ていなくなったんだ。



明るい場所で前を向いて歩いていても私の背後からはいつもヒタヒタと不幸の足音が近づいてくる。



そして追いつかれた私は不幸の中に飲み込まれるんだ。