春香さんが生きている間続いていた抗争に終止符が打たれたのは春香さんを失ってからだった。


旦那様は闘う気力を無くしてしまったと彰人さんは唇を噛み締めながら話してくれた。


そして全てから手を引いて隠居生活を送る旦那様。


抗争相手の実力者はほとんどいなくなった状態で全てを引き継ぐことになった旦那様の甥は隠居した旦那様に頼るしかなかったんだ。


敵だった人。

春香さんに酷いことをした人。


そんな人を出入りさせている旦那様の気持ちがわからない。


だけど、力のない甥がとんでもないことを仕出かす位なら自分が甥を手助けすることで世の中の乱れを防ぐことだと旦那様は考えているということも話してくれた。


「俺は川崎竜一。」


上下赤のスーツに実を包んだ男は私を見ながら自己紹介を始めた。


年は26歳。


1月15日生まれのやぎ座。


趣味は…



どうでも良いことばかり…。


興味もない。



黙って聞いている私に男はニヤリといやらしい笑みを浮かべて言ったんだ。



「近い内お前は俺の女になる。」