「マツ!いい加減にしろよ。」
いったい誰の声?
そう聞きたくなるような仲村さんの声が響き渡ったのは私の体が硬直すると同時だった。
柔らかい物腰、丁寧な口調。
とても礼儀正しい仲村さんの姿はガラガラと音を立てて崩れていく。
目を見開き驚いている私にマツはケラケラと声を立てて笑った後言ったんだ。
「なっ!彰人って実はおもしれぇ奴だってわかった?」
緊張していた私の為なんでしょ?
その時は緊張しすぎてわからなかったマツの言葉も優しさも後になってわかったんだ。
だけど、幸せで穏やかな日々の生活の中で私とマツの本当の出逢いは思い出すことは出来なかった。
私達は温室で初めて逢ったんじゃなかったんだ。
あの公園で私の手にマカロンをのせてくれた人、その人がマツだって気付いたときには私はまた奈落の底にたたき落とされた時だった。

