椅子に腰掛けアルバムパラリとめくる仲村さん。

「遥夢様もどうか座って下さい。」


俯き床から視線を上げることが出来ない私に仲村さんの落ち着いた声が届いた。


私は一度仲村さんに視線を向ける。

真っ直ぐに私を見る仲村さんと視線が合わさり胸がトクンと跳ね上がった。


焦る必要なんて何もない。


高鳴る胸を押さえながら私は仲村さんの座る椅子の前の席に腰を下ろした。



「昔、とても可愛らしい女の人とどうしようもない不良が恋に堕ちました。」



遠くを見つめながら話し出した仲村さん。




私はなんだか切なくなって膝の上で拳をギュッと握りしめた。




「愛らしく消えそうな程儚い雰囲気のその女性はいつも公園に愛犬の散歩に来ていたんです。そしてその不良と出逢いました。

喧嘩ばかりを繰り返していた不良はいつもしていたように公園の芝生の上で寝転んで傷を癒していたんです。

そこに犬と一緒に通りかかったその女性が濡れたハンカチを持って不良の側に腰掛、その濡れたハンカチで彼の血がついた頬にソッと押し当てた。

そんな始まりでした。」