僕らが生まれ、育った葉山の街は、何もかもが中途半端だった。

なにしろ、僕らが生まれる一年前までは葉山町だったくらいだ。運よく当時の町長が命名権を勝ち取ったからよかったものの、そうじゃなかったら葉山市なんてものはこの世に存在しなかった。

いっそ、町のままだったら、ろくでもない僕なんかでも些細な夢を持つことができただろうか?

例えば「葉山町出身者初の政治家になるんだ!」とか、あるいは「葉山の町を日本で一番住みよい町にするんだ!政令指定都市にも負けないくらいに!」なんて、現実と夢想の区別もつけられないような夢を見ることが叶っただろうか?今でも僕はそんなことを想像してみたりする。

中途半端っていうのはそれだけである種の罪だ。

クラスのムードメーカーを担っているやつが、興味のない授業でやる気のないことをいった時の喪失感に似ている。それだけでこっちまでおもしろくなくなってくる。そんな感じだ。葉山はまさにそんな感じだ。

ここに住んでいるというだけで生きるのにすごく疲れる。けれど、生きなくてはいけない。そういうスパイラルを生む場所だ。