「普通じゃないのは見れば分かるだろ。それに黄巾にいる間は俺の名前も馬鉄って言ってたのも思い出せよ」

 「悪い悪い周倉、俺は先に行くから賊を巻いたら家に来な。ママに紹介するからよ」

 「勝手に話が進めてんじゃねーよ。俺達は賊相手に逃げるなんてもったいない事はしないし、その荷車をお前一人で引けるとも思えねーな。俺や関羽ですら二時間毎に交代しなきゃ息がきれる」

 張飛は身を屈めて若者の目線に近づきニヤリとした。

 「普通に押せたらキスしてやるぜ」

 若者は腕にぐっと力を込めると、空車でも引くかのように前進した。
空車ではないと訴えるように荷車からぎしぎしと重低音が響いた。

 「かかかかか! 俺の名前は馬休だぜ。荷車引く為に生まれたようなもんよ! いや待て待てあんまりかっこよくねー決め台詞だな。大女に喰われたくねーから、このまま行くぜ! 賊が俺に絡んでるすきに逃げろよ!」