「そいつは大事な商品だ。渡すわけにはいかないな」

 「商人か。ならばタク県の楼桑村まで取りに来いよ。そこまで周倉に案内してもらいな。この山の抜け道にも精通してるし、賊からはうまく逃げれるはずだ。荷台の幼女は商品ってわけじゃないんだろ。こいつはさすがに預かれねぇから何とかしろよ髭男爵」

 関羽は承知とばかりに幼女をドサリと地面に降ろすした。

 「あんたはどうするんだ。重い荷車を押しながらだと逃げ切れまい」

 「この私に同じ事を二度と言わす気か? 私は決め台詞を言うのは大好きだから何度でも言ってやるぜ。私は死なん! 大望を果たすまでは死なん! 故にこんな導入部で死なん! 心配無用だ。むしろ周倉、死相が出てるぜ気を付けな。こいつはようやく見付けた仲間だからお前達が死んでも周倉は逃がせよ」

 「承知した。漢同士の約束だ。あの満月に誓って守る」

 「いやいや三日月だぜ今夜は――大丈夫か髭?」

 「ぬ、ならば漢らしくあの蛍のケツの光りに誓う」

 「普通に三日月か、せめて星だろ。無理に狙う必要ねーだろ。周倉、くれぐれも気を付けなよ。どうやら普通の商人じゃなさそーだぜ」