「ゴロツキか。客が逃げるからあっちに行けや」

 「役人様だコラ。この町じゃ俺達の許可無しに商売できないんだよ。出すもん出せばすぐにでも許可書をくれてやらんでもないがな。いや舌じゃねーよ、そんなもん出されてもムカつくだけで笑えねえぞ大女。むしろ許可書代金が大幅アップしたぞコラ」

 「何なら後ろで寝てる女を一晩貸すだけでも構わなんが」

 「このロリコン野郎が。生憎とこいつはアンドロイドだ。貸すわけにはいかんな」

 「へたな嘘つくんじゃねえよ。薄汚い商人風情がロストテクノロジーを所有してるわけないだろ。金出すか女を貸すか、お縄を頂戴するか選べや」
 長髭の男が立ち上がった。役人達よりも頭二つ分は高い。

 「客がきた。邪魔だ、どいてろ」

 見ると、役人達の後ろに老婆が手に小袋を持ったまま、困ったように立ち尽くしていた。

 「塩が安く買えると聞いたんじゃが、ここでよかったんかの」

 「ああ塩だぁ? 塩の売買は禁じられてるぞババア」

 役人の中でも人相が一番悪い役人が、老婆から小袋を強引に奪った。

 「ちっ、しけてやがるな。まあいい、こいつで許してやるから、とっとと失せろ」

 「返しとくれ! じい様が死ぬ前に塩を使った料理を食わせてやりたいですじゃ!」

 「へっ、知るかよ。さっさとくたばれや」

 小袋を高く掲げて老婆を蹴り倒した。

 と、長髭が高い位置から小袋をさっと奪い返して懐に入れ、代わりに売り物として並んでいる袋を二つ老婆に手渡した。

 「こいつは辛い砂糖だ。魚なんかにはよく合う」

 拝むようにして立ち去る老婆に伸びた役人の手を長髭が締め上げた。途端、残りの役人が一斉に抜刀して囲む。