剣をぐっと引き、跳躍。
 声も音も立てない。
 相手の命を断つのみ。

 「関羽さん!」

 簡擁の声。
 何だ、嫌いじゃなかったのか。

 しかしもう遅い。振り向くのが間に合うかどうかだ。心臓は外すかも知れないが、一撃必殺なのは変わらない。

 関羽が振り向く。

 散々無視していたくせに一瞬で反応した。

 風が巻き起こった。

 周倉が剣を伸ばした先に、関羽の背中が確かにあったはずだが、風に吹き飛ばされたのか何も無かった。

 
 何も

 
 何も無かった