そっと近づいてくる彼に…
ルシュアは体を固めた。
目の前で止まった彼の脚に…
ありえないほどの恐怖を覚える。
「我が恐ろしいのか?」
ばかにしたように
そう言いのける銀髪の男。
ルシュアはキッ…と、
彼を睨みつけた。
「っ…恐ろしいですって?誰が!
マフィアなんて皆、同じ!
殺す事だけを生き甲斐にしてる
最低な生き物よ。貴方なんか…つっ!!」
『貴方なんか、恐ろしいものですか!』
と、言おうとしていた言葉は…
即座に喉の奥の方に消えていく…。
触れられた頬に…
有り得ない恐怖を覚えるのは…
死が怖い所為じゃない…。
そう思い込む事が
ルシュアには精一杯の事だった。


