暗い森

「お嬢様、田忌様のお屋敷に行っておられたのですか?」すこし心配そうな顔で晏李は問いかけてきた。彼には田忌邸でうけている視線を打ち明けてある。両親には心配させたくないので話していない。
「ええ、いつもどおりさっさとかえってきたわ。」 「左様でございますか。しかし、お嬢様はお美しいですからな。いろんな貴族が言い寄ってくるでしょうなー」
「何を言っているのです。私は貴族などとは間違っても婚姻したくありませんからね。庶民なら実家に帰ってくることもできるでしょうけど、貴族だとここに帰ってくるのも難しいでしょう?そんなの嫌だわ。」 「そうですか。私もお嬢様と会えなくなるのはつらいですな。」 晏李は笑顔でそう言った。陽麗は少しどぎまぎした。陽麗は晏李には特別な感情を持っている。
晏李と結婚したらこの家にずっといられるのに…と考えている。