暗い森

「ああ、おかえり」
「おかえりなさい」二人が優しい笑顔で向かえてくれた。この二人を喜ばしたくて陽麗は仕事に精をだす。「陽麗、少し早いけどお昼ができているから食べてなさい。」義母が言う。
「わかりました、ではお先にいただきます」今日は腹がとても空いているのだが、それをわかっているかのように義母は食事を出してくれた。いつもそうなのだ。この家は表が商店になっており、裏には家族と使用人の住む部屋がある。臨錙では名の知れた商家だ。
先程使いに行っていた田忌という貴族は次の宰相の有力な候補であり、その家ととりひきがあるということだけでも、義父の家の力が大きいことがわかる。
さておき、食卓に向かった彼女であるが、この家の使用人である、晏李（あんり）に呼び止められた。三十歳になるこの男性は、顔に清潔な性格が表れているような人で、快活な性格であり、陽麗のことをなにかと気に掛けてくれる。