「…な………るな…!」





…誰?




「るな、起きて!」




お姉ちゃん…?



「…あっ!!!」



「きゃっ」



いきなり飛び起きたあたしに姉は大袈裟な程驚いた。



「いきなり起きないでよ、もう。」



「ご、ごめん。」



言いながら時計に目をやると時刻はもう10時を過ぎていた。



…寝すぎた。



「るな、洗い物もしてないなんて珍しいわね。今からやって。あたし着替えたらお風呂やるから。」



姉の服を見ると、真っ赤なスパンコールのマーメイドラインのドレスに、ミンクのケープを羽織っている。



…一般庶民の一般の日本の住宅にこれ程不釣り合いな格好があるだろうか?



「…いいよ、お風呂もあたしやるから。会食で疲れてるでしょ?」



「そう、悪いわね。」



そう言うと、長いストレートの髪を靡かせながら階段を上がって行く。



姉、愛-MANA-は、あたしと瓜二つだが、客観的に見て"かわいらしい"というあたしとは違い、誰がどう見ても"強烈な美人"だ。



あたしにはたぶん似合わない真っ赤なルージュが、彼女の妖麗な雰囲気をより一層強めている。



あたしはそんな姉にひそかに憧れてる。



自慢の、大好きな姉。



あたしの信じられる



唯一の家族。