その瞬間。
俺のシャツに縋り付いていた世莉奈の手がぎゅっと握られて、
「要らない。・・・・・・湊はもう要らない」
そのまま手のひらでドンっと付き返されてしまう。
要らないってなんだよ。
自分から抱きついてきたくせにホントにコイツは身勝手だ。
思わずムッとなった感情を理性で抑えいつもの無表情を即座に貼り付けた。
「おやすみの挨拶は?」
「・・・・・・要らない」
「そうか。じゃあ」
夜伽の後は必ずさせられる添い寝も、朝の挨拶と同じ意味の無い愛してると無意味なキスを交わす夜の挨拶もせず世莉奈はだだっ広いベッドの中にうずくまった。
世莉奈の気まぐれのおかげでいつもの嫌いなことをせずに済んだ。
それでも何故か。
焦燥感だけはいつもと同じだけ俺の心の中に膨れ上がっていた。

