【プロローグ】

登校してくる生徒が行き交う朝の廊下。

その真ん中を颯爽と歩いていくのは、


「世莉奈(せりな)ちゃん、おはよー」


「今日も一段と可愛いね」


華奢で透き通るような白い肌をした一人の女子生徒だった。


宮路 世莉奈。

本校きっての美少女にして、お金持ちのお嬢様。


可憐に微笑む姿が印象的な彼女の数歩離れた所から見守る姿がひとつ。



感情の読み取れない無表情と影の薄い細く長いシルエットはまるで世莉奈とは正反対で。



人々の視線を浴びて輝く彼女の影と化してる彼、寒川 湊(みなと)は代々宮路家に仕える家系の次男だった。



歳が同じなせいか、はたまた寒川家に生まれた宿命か。

幼馴染みという肩書きを担いながら17年間を世莉奈と共に過ごしてきた彼に新たに与えられた役目に、最近の湊はずっと思い悩んでいるのだった・・・・・・。