ばあちゃんは死んだ。


ボケた老人が夜中に徘徊し、足を滑らせて川に落ち、溺れ死んだ。


ただそれだけの事。


警察も、近所の人達も。


もしかしたら、俺以外の全ての人間が。


そう思っているのだろう。


そんな俺の思いも虚しく、通夜と葬式は淡々と過ぎていく。


ばあちゃんは…


何を思って家を出て、何を思って川へ行って、何を思って目を閉じたんだろう?


じいちゃんが…


迎えに来たのか?


俺はあの日のばあちゃんの姿をを思い浮かべた。


なぁ。


あの日は久しぶりに、調子の良い日じゃなかったのか?


あの日の涙は何だったんだよ。


なぁ。


ばあちゃんが作ろうとしていたものは、蒸しパンだろう?


俺の誕生日に、毎年作ってくれていた。


なぁ…