チリンチリン…


風鈴の音が、まるでじいちゃんからの誘いのように鳴り響く。


「帰るわ」


壁の時計を確認して、俺は立ち上がった。


俺はばあちゃんが好きだった。


でもばあちゃんを嫌いになりそうな自分もいる。


何でばあちゃんはボケてしまったんだ。


何でばあちゃんは良くならないんだ。


何でばあちゃんはそんな悲しい事を言うんだ。


頭の中で様々な思いが駆け巡る。


そんなやりきれない思いで部屋を出ようとした俺の背中に、ばあちゃんの声が聞こえた。


「ごめんね」、と。