街に戻ってきてから五日目の朝を迎えた。この数日で書庫にあるめぼしい本はだいたい目を通したけど、収穫は何もない。吸血鬼になってしまった人間の戻し方なんて欠片も書かれていなかった。
いや一つだけ収穫はあった。偶然見つけたエリィの自室と思われる部屋で発見した手記。きっとこの中に恢のことが書かれているだろう。でもこれはエリィの日記。いくら故人と言っても他人の日記を見るのは躊躇われた。

机の上に乗ったままの日記を横目に窓辺へ向かう。朝日を浴びようとカーテンを開けるとガラスの向こうに森へ消えていく人影が見えた。

「……恢?」

それが街の方へ行く道だったら何とも思わなかったかもしれない。けれど、恢らしき人影が消えたのは裏の方で、そこから先は森しかなく、何の目的もなく入っていく場所ではなかった。

「裏に何かあるの?」

好奇心に駆られ後を追うように森へ向かった。

屋敷を出て先程人影を見た辺りまでやってきた。木々で隠れていて気付かなかったけど、道のようなものがある。

「ここを通っていったのかな」

位置的に考えてこの道を消えていったと考えるのが自然だろう。
まるで何かに導かれるようにその道へ足を踏み入れる。

なんだろう。

胸がドキドキする。

一歩踏み出すごとに鼓動が大きくなる。

行かなくちゃ。

この道の先に、何かが……。

いつの間にか走っていた。
私はこの先にあるものを知ってる。


この茂みを抜けた先は――…