もう死んだと思っていた。

ヴァンパイアに出逢って、殺してくれと懇願したのだ。死んでいないはずがなかった。

でも、私は暖かなベッドの中で目を覚ました。



重い目蓋を開けると、見知らぬ天井があった。上半身を起こして周りを見渡したが、やはり見たことのない部屋だ。
私は思い出したように首に手を伸ばした。それはすぐに見つけることができた。
あの時の牙の痕はまだ残っていた。

『…………どうして?』

また死ねなかった。

そう思ったら涸れたはずの涙が頬を伝った。この時はまだ、生きていた安堵感よりも死ねなかった悔しさの方が強かった。

その時軋んだ音を立てて扉が開いた。開いた扉の陰から現れたのはあのヴァンパイアだった。

『やっと目が覚めたか』

ヴァンパイアはいつの間にか私の目の前に立っていた。

私は涙を流したままヴァンパイアの服にしがみついた。

『どうして?どうして殺してくれなかったの!?生きていたって私にはもう、居場所なんかないのに!!』

叫ぶように言い放つと堪えきれなくなって声を出して泣き始めてしまった。
私が服にしがみつき泣き始めてもヴァンパイアは微動だにしなかった。