その時、酒場のドアが激しい音を立てて開いた。

「何!?」

慌てて振り向くと、入口にがたいの良い男が二人立っていた。ただし、一方は意識を失っている様で、ぐったりしてもう一方の男に担がれている。

「バ、バケモノだ!!ガルドーがやられた!!」

真っ青な顔をした男が叫んだ。

その瞬間、隣にいた恢が動いた。人の目があるためあくまで人間らしい速度で酒場の中を駆け抜けていく。抑えていても人間離れした速度であることに変わりないけど。

酒場の中は凍り付いたように静まりかえっていたが、それを皮切りにざわつき始めた。

「ガルドーだと!?」

「あいつはこの界隈で一番の強者じゃなかったのかよ」

呆気にとられていたけど、ハッと我に返り恢を追って喧騒の中出口に向かって走り出す。

出口の直前で誰かに腕を掴まれた。

「お嬢ちゃん、どこに行くつもりだ!?」

それは入ってきたときに腕を掴んだ酔っ払いだった。
恢の脅しとこの騒ぎで酔いが醒めたのか、さっきよりマシな顔をしている。

「どこって、バケモノを倒しに行くに決まってるじゃない」

「正気か!?街一番の腕利きがやられてるんだぞ!!」

「そうだ!悪いことは言わねェから止めとけ!」

周りにいた男も止めに入ってきた。

これ以上足止めを食らうわけにはいかない。早く恢を追わなくちゃ。