家族を失った夜、私は美しい吸血鬼《ヴァンパイア》に出逢った――。










月明かりに照らされた変わり果てた家のリビング。

床に広がるおびただしい量の赤黒い模様。

赤黒い水溜まりに俯せに倒れている両親。





夢であって欲しいと何度も願った。でも、何度目を閉じてもあの無惨な光景は消えてくれない。
瞼の裏に焼き付いて剥がれない。



どうして私だけ殺さなかったの?
どうして私一人遺していったの……?



そんなことばかり考えていた。