川ちゃんは静かに

「見てない」

と言った




弱弱しくそう言ったんだ

でも、頼むから言ってほしい



きっと、このことは神崎の耳に確実に入る

川ちゃんがなにも言わなかったって知ったら・・・




私はなにより

大切な人が苦しむのは見たくないんだ




「・・・言っていいんだよ」



震えそうな声を押し殺す

静かに問いかけても

無言で川ちゃんは首を横に振った




「川本、知ってるんだろ・・・言えよ」


クラスの人がそういった

あきらかに何かを隠している

そんな風に見えたのかもしれない




「・・・いいよ」



私はそう言った

誰かを守るため

そう思えばなんも苦しくなんかない

そう言い聞かせた




「・・・智・・・・・・ちゃん」


川本はその場にしゃがみこんで

静かに泣き始めた

周りにいた女子がわけもわからず慰める