その途端に華織があたしに抱き着いてきた
あたしの手に捕まれていたパンは呆気なく驚きで力を失った手からおちた。
「ぼっ暴力とかふるうんだったらいくら向井和人でも律だけは渡さないからっ」
1瞬耳を疑ったけどすぐに理解した。
華織…あんたは本当の友達だよお…
和人のととのった眉がピクッと動いた。
やばっ怒らせたんじゃ―――
「律にそんなことする奴いたら俺だって許さねえな」
―――――――え。
教室じゅうがさっきとは違う沈黙と驚きで包まれたのが分かった。
華織があたしを抱く力も弱まっていた。
それが分かったのか和人があたしの手をつかんで椅子から立たせて
「じゃ、借りっがら」
走りだした。

