二人が真面目に話しているところについにあの男が口を開いた。

「あの〜」

「どうしたのカズ君?」

「お、お手洗いはど、どちらで?」

「もう、せっかく真面目な話ししてるときに!しっかりしてよね!」

「だってさっきから我慢してたんだもん、でどこ?」

「奥行って右ですよ」

「そうか、サンキュー正輝…ちょっと待て、お前なんで美里ちゃんの家のトイレの場所わかるんだよ?」

「え?いやなんだか前から知ってたっていうか…」

「テル君は一度だけ私の家に来た事があるけど…まさか知らないうちに思い出せてることがいくつかあるんじゃ…」

「わかりません…ふっとでてきたような感じなんです」

「テルとして過ごしていた環境にいることでテルとしての記憶や感情が少しずつだが解き放たれてきているんだ」

「ところでカズ君、トイレは?」

「はぅ!じ、じゃあい、いってくる…はぅ」

カズは爪先立ちでゆっくりと部屋を出ていった…