家に戻った俺は、不意に居間から聞こえた兄たちの声に足を止めた。



いつものように、仕事の話をしているのかと思ったが……少し違う。



「尊に正式に跡継ぎの打診が来たらしいな」


「……ようやく、これで小野寺との繋がりが出来そうですね」



少し弾んだ兄たちの声。
やっと俺も、あの人たちと肩を並べられるんだ。



そう思い、明日は絶対に雫希を頷かせなければと……決意を新たにしたところで、



「まぁ、これでやっと父さんも厄介払いが出来る訳だ」


「……そんな言い方したら、尊が可哀想ですよ。兄さん」



思考は一気に停止した。

足が、全身が小刻みに震え始める。



「父さんは潔癖だから、余所者が宮越の名を語るのが嫌なんだよ」


「だからって、六歳の尊を雫希さんと仲良くさせて跡継ぎに仕向けるなんて……全く気の長い話ですね」



兄たちがまるで世間話でもするかのように、簡単に言ってしまうから……俺の頭の中に上手く入って来なかった。



俺は……宮越の家にとって、邪魔な跡継ぎの道具でしか無かったのか?