その日から優二の電話はきまって深夜に鳴り、それは永遠に続くと思われる大きな決意のようなものを感じさせた。



これから売り出そうとするアーティストとのプロモーションの旅の途中ですら、それは途切れる事なく続いた。



ある時、


「F&Sのライブがあるんだけど、来ない?」



「う~ん、行けたら。」



あまり気のない返事に 優二は


「来るまで待ってるよ。」


と弾んだ声で何度も言った。



「知ってるでしょ?
F&S。

復帰ライブなんだ。

僕が担当になってさ。
盛り上がらないと困るんだよ。」




音楽業界の事はよく解らないけど、優二のおかげで たくさんの曲を知り、好みのアーティストを語れるようになった。



私が好きだったのはエリックカルメン、マイケルフランクス。


タイプは違うけど、どちらも心地良い一時を与えてくれるミュージシャンだ。




優二の連れて来るアーティストと音楽の話をすることは、優二を知る事でもあり、新しい出会いであり、だけどそれが私を変える要因になる事を優二は気付かなかったのだろうか。



疑う事はなかったのだろうか。




そして そのライブが、私の重い罪の始まりだった事を、優二は知っていたのだろうか。