「初めまして。佐倉千秋様ですね」


突如目に飛び込む、礼儀正しい言葉を揃える目の前の若い男。

同い年ぐらいに見えるのは、あたしの気のせいだろうか。


「申し送れました。千秋様のお世話係兼、執事を担当します、如月玲と申します」

「あ…えと、佐倉千秋と申します」


目が大きく鼻筋も通っている顔に、生まれつきのものだと思われる薄茶色の髪。それに釣り合った細身の体と輪郭。

非の打ち所が無い…


「それでは参りましょうか。雪子様もお待ちですよ」


背中を手で固定され、車へと導かれる。


「お母さん！仕事頑張って!!」


あたしはそれだけを叫ぶと、家を後にした。