あたしはおもむろに紙袋の奥に手を突っ込んだ。ふわっとした柔らかい感触が、手いっぱいに広がる。


「何これ…ドレス?」

「一応とは言え、社長の姪ということで色々と必要になってくるだろ?だから、それ」


何と…言っていいのやら…見るからにお高そうなこの服達は、柄にもなくあたしの腕に埋まっているのが紛れもない事実。

目をこすって夢でないことをもう1度確かめ、目の前の如月に目線を戻す。


「お気に召されましたか?千秋様」


にっこりと笑みを零したあたしの執事に、あたしは呆れ気味にこう言った。


「…しょうがないなぁ」


言いそびれたお礼。聞き慣れてしまった自分の鼓動。受け止めるに受け止められない…


「帰ろっか。如月」


きっと、もう気づいているのかもしれない。


この人…案外悪い人じゃないんだって…