あたしは弱々しい声で叔母さんになげかけた。


「えっと…あ、笹峰手帳を渡して頂戴」

「かしこまりました。雪子お嬢様」


スパスパと華麗に動く笹峰さんに、心から感心した。そして何故、こうもあたしの執事は悪どいのかと、宛てもなく呪った。


「5日間ね」


ちょうど忘れかけていた頃に、叔母さんはそう言った。


「そんなに…ですか」

「あら、これでも短いほうなのよ。下手すりゃ、2年間の出張とかもあるんですもの。ね?笹峰」

「はい。存じ上げたとおりです」


2年間…あたしは心臓に杭でも打ち貫かれたような、その年月に目眩がする。


「多分聞かされたと思うけど、玲と千秋ちゃんは婚約者なのだから。いいじゃない。邪魔者が消えるんですのよ」


ああ…また目眩のする単語が耳に入る。


「如月…さんとのその…婚約は、正式に決まったんですか…?」