その場を急いで駆け去り、教室へと踏み入った。

…その瞬間だった。


「お待ち下さい、お嬢様。先程した、とんでもないご無礼をお詫びします」


腕を思い切り捕まれ何事かと思い、振り返ってみると、倉木さんが息を切らし立っていた。


「そんな…とんでもないです。それよりいいんですか?あたし、倉木さんの主でもなんでもないのに、お嬢様だなんて」

「あぁ宜しいんですよ。お恥ずかしい話なのですか、その主人というのが小牧様なのです」

「え!?でもさっき…」

「校内では秘密だということで、小牧様が。…なんでも如月玲に分かられたくないとかなんとかで…」


そんな小さい男のためだけに、あの巻き髪嬢はこんなパーフェクトな倉木さんにそんなことを、言わせたのか…


「あの不仕付けながらもお聞きしますが、その…如月玲と婚約…してるというのは本当ですか…?」

「あー…嘘、嘘。そんなわけないじゃな…」

「嘘なんかじゃねぇよ。つか唯、こんなことまでして、俺の邪魔かよ?」