あたしの執事

あたしは汗だくの顔で振り返り、こちらへと寄って来る悪どい執事への訂正を指す。


「さっきのは何?なんかのドッキリでしょ。つくづく頭狂ってるね、アンタ」

「ドッキリでも冗談でもない。婚約の件は本当。いい加減認めれば?俺と結婚できて嬉しいでしょ、千秋」

「ふっざけんな。アンタとこの先、同じ空気吸うって考えるだけでも寒気するのに、今度は何、婚?結婚?ホント、そんなことされたらたまったもんじゃないわ」

「相変わらず千秋は面白いね。あ、ねぇ話変わるけど如月財閥って聞いたことある?」


如月財閥といえば、叔母さんの株式会社を悠に超える、不動産会社や石油会社を取り持っている有名なお家のことだ。


「聞いたことある…けどそれが何?」

「それ俺の家のこと」

「はぁあ!?」

「雪子サマが『玲と千秋ちゃんて仲宜しいんでしょ』とかなんとかつってきて、勝手に俺の親と決めたんだよ」


お金持ちの世界は隅から隅まで意味が分からない。


「なんで止めなかったのよぉ。あたしと倉木さんの花の青春計画は、どうなるのよ」