「そろそろ行くわ」


そう言いながら立ち上がる如月。長い足を上手く絡めながらスッと立つ。


「あ、何なら添い寝でもしてやろーか?」


ニヤニヤ笑いながらそう言った目の前の男。そんなことされるこちらの身にもなってほしい。考えただけで寒気がする。


「結構。一晩中、鳥肌が立っておちおち寝も出来ないわ」

「冗談ですよ。そんな事したら、私が千秋様に踏み潰される危険性もありますしね。
…あ、これは失言でしたかね。では、おやすみなさいませ。千秋様」


またいらない一言を発する。何故こうも嫌味しか出てこないのだろうか。


「さっさと消え失せれ!クソ執事」


あたしは恨みをふんだんに込め、最後に大きく叫んでやった。

ドアが静かに閉まる。こういう時だけ、執事らしいなと思った。


「…明日からどうなるんだろう」


期待と不安。とめどなく流れ合い、体をくすぐった。

新しい学校に新しい先生、生徒。正直、不安のほうが強く眠れない。あたしは自分の堅い目を無理矢理閉じた。

そして浅く眠りにつく…