渚ははっと我に帰り、とっさに
「だ、大丈夫です!!」
と言葉にし、差し出されたイスに座る。

「あ。そうだ、私は「虹」と言う花屋を営んでいるんですが、今日は信吾さんに花束を届けてほしい。と頼まれたので持ってきました。」
渚は花束を彩に見せる。
すると彩は花束をうけとり

「うわぁ綺麗っっ!!」
とさっきとは違う、無邪気な笑顔になった。
「なんでも信吾さんは部活の長期合宿があるとかで、当分来れないので花束をと言っていました。」


少し無愛想そうな声だった信吾という少年の声には、温かみがあった。
きっと彩さんに対する愛情なんだろうと渚は感じていた。

「そう…ですか。信吾……来れないんだ」

彩は悲しそうな声でボソッと呟いた。



「良かったら、毎日花を届けに来ましょうか?」
「え?」

自分でもビックリする言葉を発していた。彩も少し困った顔をしている。