「で、どういうこと?」
 
「遥斗のこと? 野球部に入りたいけどユニフォームが無いから、俺の古いやつをあげたんや。問題ないやろ?」
 
「問題はないけど……。神山君、初心者なんやろ? あんたがちゃんと教えてあげや」
 
「分かってるって。あいつは上手くなる」
 
 
 そう言うと、宗は再び自分の部屋に向かった。入部届の空白箇所を埋めるためだ。
 
 クラスと氏名、希望するクラブ名、意気込みなどを書いていく。数分で書き終わらせることができた。
 
 1階に降りて弘也の遊び相手をしていると、母親が声をかけてきた。
 
 
「神山君、どこのポジションすんの?」
 
「ピッチャー。今日、少しだけ受けてみた」
 
「どうやった?」
 
「球は遅かったけど、それ以外は良かったよ」
 
 
 お世辞ではない。
 
 毎朝走っているためか、しっかりとした足腰。片足の状態で、一切ぐらつかずに会話が出来たので、合格点だ。
 
 精密機械のようなコントロール。8割ほどのボールが構えた所に投げられた。
 
 そしてあのスタミナ。
 
 練習には難なくついていけるだろう。伸びしろは大量にある。ひょっとしたらひょっとするかもしれないと、宗は思った。