「もうやってたんや。あれが遥斗の坊主か……意外と似合ってるやん」
 
 
 後ろから水原の声が聞こえたので、吉田宗はボールを遥斗に投げてから振り返った。
 
 そこには、袋を持った私服姿の水原が立っていた。袋には、おそらくオニギリが入っているのだろう。
 
 
「まだ、キャッチボールやけどな。あと、その言葉は遥斗に直接言ってやれ」
 
「ムリムリ」
 
「何でや……。まあ、どっちでもいいけど」
 
 
 そう言いながら、遥斗を呼ぶ。とりあえず投球練習は昼飯を食ってからでいいだろう。
 
 宗は、遥斗から手渡しでボールを受け取ると、近くにあったベンチに座った。遥斗と水原も隣に座る。
 
 
「ヨシムネ、遥斗のピッチングどう?」
 
「だからまだキャッチボールやって。食い終わったらやる。見てくやろ?」
 
「当たり前やん。見いひんかったらただのパシリやし」
 
 
 水原は自分が持ってきた、遥斗のオニギリを指差しながら言った。遥斗は苦笑いしている。
 
 遥斗が昼食を食べ終わった。すぐに動くのも良くないので、宗はストレッチしながら時間を潰した。
 
 
「宗、やろう」
 
「よし」