遥斗は慌てて宗を見た。宗が感情的になるのを、遥斗はあまり経験したことがなかったからだ。
 
 
「勘って……いい加減やな、お前」
 
「お前ほどじゃないけどな」
 
 
 宗と安藤の視線がぶつかる。
 
 教室全体に異様な空気が漂う中、空気を読まずに口を開いたのは長嶺だった。
 
 
「はい、お疲れみんな。安藤も席に戻っていいぞ」
 
 
 まさかの乱入に、安藤は少し唖然とした表情を浮かべていた。しかし、これ以上議論しても仕方ないと判断したのか、何も言わずに自分の席へ戻った。
 
 
「よし、一日お疲れさん。明日から授業始まるから、昼飯いるぞ
 そうそう、部活の入部届も明日から受け付けられるから。このクラスは硬式野球部に5人も入るらしいな。甲子園目指して頑張ってくれ」
 
 
 長嶺はそう言うと、時間割も印刷された学級通信――これにより、彼のネーミングセンスを遥斗は疑うことになった――と、入部届を配った。
 
 入部届は冊子の様になっており、各クラブのアピールが書かれていた。最後のページが入部届になっている。
 
 長嶺の号令によって解散されると、遥斗は宗と光に声をかけて、帰路についた。