「はいはい。冗談はいいから」
　
「遥斗は昔から口だけは達者やからな」
　
　
　遥斗の言い訳ともとれる言葉に、宗も光も、少し馬鹿にしたような言葉で返した。少しムカついた遥斗は仕方なく口を開いた。
　
　
「ここから俺の家までなら500ｍくらいやと思う。２往復で勝負しようや。それやったら文句ないやろ」
　
「２往復ってことは２キロか……まあいいやろ。制服やけどそれはお互い様やしな」
　
　
　やる気になったのか、宗は持っていたカバンを地面に置いた。それを見て遥斗も自分のカバンを地面に置く。しかし中身も大してなかったので、あまり軽くなったとはいえない。
　
　
「制服でいいの？」
　
「いい」
　
　
　光が聞いてきたが、遥斗はすぐに答えた。宗も頷く。
　
　
「光、頼む」
　
「……？　何を？」
　
「スタートの合図や」
　
　
　彼女はやっと分かったのか、遥斗の言葉を聞いてから、位置について、と言った。
　
　それを聞いて慌てて遥斗と宗が構える。
　
　
「よーい……ドン」
　
　
　光の言葉を合図に遥斗は走り出した。宗もほぼ同時に走り出したようだ。